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 プロの研修講師への道

<その7>話のネタを拾う

 

講義のテーマ、プログラム、内容はもちろん大切ですが、より理解、納得してもらうため、また記憶に残してもらうためには、事例、たとえ話、エピソードなどを挿入して講義することが効果的です。今回はこうした話のネタの拾い方をお話しします。

 

あなたが1年くらい研修講師としてやっていくと、新聞、雑誌はもとより、テレビのバラエティ番組、電車の中で前の席に座っている若者の行動、中吊り広告など、全てのものの見方が変わってくると思います。飲み屋でも隣のグループの会話に耳をそばだてるようになるでしょう。
「あ、これはあの話の事例に使える」「これはあの研修の例え話になる」など考えながら見聞きするようになると思います。
意識していないと見逃してしまう事柄、これをネタに拾うことが、アンテナの感度を良くするということなのです。

 

もちろん、テレビで見たことをそのまま紹介したり、雑誌の受け売りではネタ元がばれて、かえって薄っぺらな講師に見られます。自分なりに問題点を考え、自分のテーマに関連づけをし、それに独自の視点から自分の考えを加えて話さなければなりません。

 

もうひとつ有益なのは、他のセミナー、講演会、研修に参加することです。有名な講師は必ず、なるほどという話をいくつか持っているものです。話という形のないものには著作権はありませんが、聴いている人の中には、その先生の話を聴いている人がいるかもしれません。自分なりに咀嚼して、自分の言葉で語ってください。耳新しい話、 オリジナリティのある話でなければ、受講者に馬鹿にされるだけです。

 

企業訪問、経営者、担当者との意見交換、現場見学など正攻法の情報収集もチャンスがあれば大変有益なことは言うまでもありません。コンサルティングもされている方は、コンサルの傍ら最新の情報収集ができます。ただし、アウトプットする際は、秘密保持契約、守秘義務に抵触しないように気をつけてください。

 

前に述べたように、自分で講義をするようになると、受講者との会話、質問も絶好の情報源になります。ただ、それだけでは講義と関係の深いものばかりになりますので、講義に広がりを持たせるには他の世界での話題も必要です。

 

こうしてアンテナの感度をあげていけば、わざわざ関係図書を買って読む必要はない、と言いたいところですが、情報収集は多面的に行えればそれに越したことはありません。自身のテーマに関連の深い本だけでなく、一見関連が薄いと思われる書籍の中からも役に立つ情報、ユニークな視点が発見できるかもしれません。感度を上げるだけでなく、アンテナは広く張り巡らせておきましょう。

 

よいネタというのは、聴いた人が他の人に話したくなるような話。これがテーマに直結していれば、研修に一番大切な“アクションを起こさせる”ことに繋がります。また、聴いた人がネタ元を尋ねられたとき、「○○先生のセミナーで」と言ってくれれば、講師にとって格好の宣伝になります。

 

挿入する例話、エピソード、事例は常に更新する必要があります。事例としては、最新のもの、時事ネタなどがうけます。受講者にリピーターがいないことを確認しても2〜3回、1年以上同じネタを使っていてはいけません。 時事ネタ、事例には賞味期限があることも忘れずに。
私がかつてお願いした講師で、10年ぶりにお願いしたら事例も含めて全く同じお話だった方がいます。懐かしかったですが、講義はアーカイブではありません。また、講師として売れれば売れるほど、同じ話を聴いた人が増えていきます。さらにインプットする暇がなくなってきます。そうして一過性の人気で消えていった方も大勢いらっしゃいます。

 

ロングセラー商品と言われるものでも毎年、少しずつ改良しています。定番のビールでも毎年少しずつ味を変えている。そうでないとまずくなったと言われるという話をビール会社の開発をしている人から聴いたことがあります。 コンビニやファーストフードでも新商品開発は欠かせません。売れ筋商品でも、生き残るために常にバージョンアップを考えています。
どんなに当たりテーマで売れている講師でも、同じ話を繰り返していてはやがて必ず飽きられます。

 

そのためには新しいテーマで講義を開発する必要があるのはもちろんですが、同時に、話の小抽き出しをたくさん持っている必要があります。
いつも自分の研修をよりよくすることを考えていれば、何気なく見逃してしまうような事象でも、アンテナに引っかかることがあるでしょう。
そしてそれを活かすためには、いつもメモ帳を用意して、思いついたら書き留めておくようにします。立派なネタ帳ができると思います。 そして、それらのネタをいつでも取り出せるように話の小抽き出しの中にしまっておきましょう。

 

1億人を超える日本人のうち、話を聴くのは数十人、とは言っても、積極的にセミナー、研修に参加される方はほんの一握り、一摘みの方です。本当に狭い世界なんです。そしてその中であなたのファンもできるでしょう。そうした方々に「いつも同じ話をしている」「話がつまらなくなった」と言われないためにも、日々、インプットの努力は欠かせません。

 

一般社団法人 人財開発支援協会では、食えるプロの研修講師になりたい人のために「研修講師育成講座」を開講しています。修了後も情報収集に役立つよう、登録制度も充実しています。


次回は、「講義・研修の始め方」と題し、講師への信頼を獲得するために大切な導入部分についてのお話です。


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執筆者:福田 隆二

 

セミナー主催会社を30年余り経営。 現在、CS研究フォーラム自動車産業研究フォーラムを自ら主宰するとともに、 東京大学大学院経済研究科 経営教育研究センター特任研究員として「ものづくり寄席」などを開催、東京大学グローバルCOEプログラムものづくり経営研究センターで「ものづくりインストラクター養成スクール」、法政大学ビジネススクール企業家養成コース「ワークショップ事務局」コーディネーター等も歴任。企業法務・コンプライアンスの研究会「ビジネス法務アカデミー」企画担当など研修・知的イベントのプロデューサー、コーディネーターとして幅広く活躍中。

35年を超える研修主催者としての経験による独自の視点から、目から鱗の情報を「研修講師育成講座」で提供している。

 


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