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プロの研修講師、インストラクターを育成する人財開発支援協会

 ベテラン研修講師の独り言

<その6>研修講師は「まった!」なし

 

研修という仕事は「まった!」なしである。毎回毎回、真剣勝負である。今回うまくいかなかったからやり直すということもできない。毎日が真剣勝負であり、常に一発勝負だ。もちろんプロの講師である以上、負けるわけにはいかない。

 

 しかし生身の人間を相手にする以上、こうやれば必ずうまくいくという方法はない。たとえば同じ研修を毎日違う受講者に対して行っても、日によって受講者の反応は違う。まったく同じ話をしているのに、昨日は受けたけど今日は受けないということもある。昨日はすごく盛り上がったのに、今日はさっぱりということもある。

 

 この話は絶対受けるという自分の必殺ネタでもウケないときはある。講師として愕然としてしまうこともある。かと思うとウケるところではないのに、やたらウケてしまうこともある。以前、連続6日間同じ話をしたことがあるが、やはり受講者の反応は毎日違った。やる前は6日も同じ話をしたら、話す方も飽きるかなと思っていたが、実際は日々の反応が違いおもしろかった。

 

 でも、なぜ同じ話をしているのに反応が違うのだろう。これはいろいろな要素が重なり合って決まると思う。受講者の性格もあるだろう。受講者の年代や性別にもよるし、受講者の研修慣れもある。また、強制参加か自主参加によっても違うし、無料か有料かによっても異なる。主催者による受講者への動機づけにも、研修テーマにもよっても違う。さらに会場の広さや間取り、窓のあるなし、その日の天気や温度・湿度も影響する。
いろいろな要因が重なり合ってその日の雰囲気も決まる。それは全員の前に立った瞬間にある程度わかる。今日は固いな、緊張してるな、ネガティブだな、リラックスしてるな等々、立った瞬間に伝わってくるものがある。これがわからないようではプロとは呼べない。

 

 瞬時にして場の空気を読むことができなければならない。そしてこの空気をどのように変えていくかが講師の腕の見せ所である。

 

 以前、受講者全員がマスクをしていたことがある。ちょうどインフルエンザが大流行しているときで、受講者全員にマスクをさせたいという主催者からの申し入れがあった。断ることもできず了承したが、研修自体はすごくやりにくかった。受講者の表情が読めず反応がわからない。冗談言っても笑ているのかどうかもわからない。グループ討議をしても誰が発言しているのかわからない。だいいちマスクをしていると発言そのものも少なくなってしまう。討議だって盛り上がらない。どんな顔をした人なのか?年代は?わからない。一日の研修が終わって、受講者がマスクを外したとき、おっ!こんなきれいな人もいたのかと改めて気づき、なんか損した気分であった。

 

 多くの人が怖い顔をして講師を睨みつけているときもある。全員が伏し目がちで講師と目を合わせないようにしているときもある。緊張した面持ちで講師を見据えているときもある。何を言ってもまったく反応がないときもある。

 さあ、どのように対応したらよいのか?研修はもう始まっている。後ろで研修担当者がさあどうする?といった表情で講師の顔色をうかがう。まった!はきかない。

 

 全身全霊を傾け、瞬時に判断して対応するのがプロの研修講師だ。

 

 一般社団法人 人財開発支援協会では、プロの研修講師を目指す方々へ「研修講師育成講座」を開講しています。ベテラン講師陣がマンツーマンで指導します。


 次回は、プロの研修講師としての必須知識、「得意分野などたかが知れている」というお話です。


© 2014 Toshiharu Amemiya

 


 

執筆者:雨宮 利春

 

(一社)人財開発支援協会 代表理事

 

1977年 青山学院大学経済学部卒 商社にて営業本部マネージャー等を歴任後、1989年 経営コンサルタント・研修インストラクターとして独立。 現在 コミュニケーション、対人折衝、クレーム対応、プレゼンテーション、リーダーシップ゚等の 技術指導で組織の人材開発を支援、各種企業団体等の教育研修事業・講演・ コンサルティング、 執筆等で活躍中。
2010年 一般社団法人 人財開発支援協会を設立、代表理事に就任。「研修講師育成講座」を開催するなど、後進の育成にも尽力している。
中小企業大学講師、一級販売士、産業カウンセラー
主要著書:「あいさつ上手になる本」、「パソコンプレゼンテーション入門」、「顧客を動かす『話す』 技術『聞く』技術」、「絶妙な『断り方』の技術」 、「絶妙な『クレーム対応』の技術」 、「だから、あなたの会社の『クレーム対応』は失敗する」他多数



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